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2012
0216
Thu
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◆メロウ メモリアル◆




本文は追記から~。












◆メロウ メモリアル◆







舞台は、札幌の片隅に構えるカントリー調の新築の一軒家。

秋の澄んだ空気が漂う空に、だんだんと淡い水色から美しい夕陽のガーネット色が混ざった、見惚れるくらいに綺麗なグラデーションを描き始めた頃、


秋撒き用の草花の植え付けや、春に咲く花の球根など、多種多様な植物たちを綺麗に整備された広い庭先に植える作業を中断し、
日焼けひとつしていない雪のような真っ白な額に、じんわりと浮かび上がっている汗を軽く拭いながらベランダに腰掛けたお母さんは、
私が淹れた自家製のハーブティーが注がれているマグカップを両手で口元に運び、にっこりと微笑んだ。



「お母さん、今日はもうこのくらいにしておこうよ。そろそろ日が暮れて肌寒くなるよ」


「そうだねー、最近はめっきり秋めいてきたし……このシュウメイギクとスイセンの球根を植えたら、続きは明日やることにするよ」


そう言って素直に頷いたお母さんは、庭仕事用のエプロンのポケットに入ったたくさんの球根を、泥だらけの軍手をはめた両手いっぱいに取り出すと、顔の横で茶目っ気たっぷりに揺らしてみせた。



「ん…。ごめんね、今年は私、お手伝いできなくて。塾の宿題やるの、すっかり忘れてたの」


「なに言ってるの。受験生は今が大事な時期でしょう?家のことは気にしなくていいから、無理しない程度にがんばってね」


「…うん、ありがとう。でも残念だなぁ、今年は例年より気候が良いから、
私も自分のお気に入りのハーブとかお花とか、お母さんと一緒にこのお庭をカラフルで素敵な花壇に仕上げたかったのに…」






――……たぶん、私の花いじり好きの趣味は、お母さんのDNAをがっつり受け継いでいるんだろうなぁ。


…どうせ遺伝するんなら、自分の親の素敵だと思うところを、自分で選んで生まれてこれたるようになっていたらいいのに、って思う。



………――なんでよりにもよって、一番厄介な頑固で融通のきかないところが似ちゃったんだろ…。



………もー、勘弁してよぅ、お父さん…。






***




…札幌市内の公立高校に進学を希望していた私が、ある日突然、第一希望の高校を変更すると両親に告げた時、

お父さんとお母さんは2人揃って目を丸くして驚き、

更に進学先を変更したいと思った理由を告げた時、猛烈に反対したのは他でもないお父さんだった。



「なんでまたよりによって北幌高校なんだよ!?
しかも、黒沼のお父さんとお母さんちに居候するだなんて、
…そんなん無茶に決まってんだろぉー!?」


「そんなことないよ!黒沼のお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも大歓迎してくれたもの!
それに私、毎日ちゃんとお祖母ちゃんの家事のお手伝いもする!ぜったい、約束するから!」


「…な、だっ…そっ……!!…~~~ッ!
…とにかく、まだ早いよ!高校生になったばかりの年頃の女の子が、
独りきりで普段から馴染みが無い街の高校に通うなんて…!」


「…そんなこと言って、お父さんが一番反対してる理由って、
私が毎日お父さんのそばに居られなくなるから…でしょう?」


「…うっ…!なんだよぉ、さくらはお父さんのことそんなに嫌いなのかよー!?」


「え…いや、だから、嫌いなんて一言も言ってないよ?
……ただ、まあ…、たまーに、ちょっと鬱陶しいなぁーって…、
……思うことは、あったけど、」


「…わー!やめろよ!愛娘の口から直接そんなセリフ聞きたくねーよっ!!」


……、

………、


「………ふっ…!…くふっ…ふふふ……っ!」



しばらく火花を散らし続けた父と娘の攻防を、黙って静観していたお母さんが、じっと吹き出すのを我慢していたように突然、肩をプルプル震えさせて悶絶し始めた頃には、

とうとう娘の気迫に負けたお父さんが、しぶしぶ説得に応じる形になったのだった。




***




「…でも、北幌高校に進学したい理由っていうのが、なんだかとっても、さくらちゃんらしいよね。
…高校の近くにあるお花屋さんで、どうしてもアルバイトしてみたいんだ、って言われたとき…お母さん思わず笑っちゃったよ」



数日前の出来事を思い返しているらしいお母さんは、マグカップ片手に苦笑いして、

「それにしても、あのときの翔太くんの落胆っぷりったら!なんだかもう、可哀想に思っちゃうくらい……」


と、クスクス笑いを噛み殺すように眉根を寄せて、頬の筋肉をぴくぴく震わせて笑いを堪えるのに必死になっている。






「あのね、小さい頃からの夢だったんだ。


お父さんとお母さんの寝室に飾ってある、ピンクの薔薇のドライフラワーが売ってたお店に、
いつか私もお勤めしてみたいなぁ…って」




「世の中のお父さんとお母さんみたいな素敵なカップルさんやご家族さん方がね、
お花を贈ることで、少しでも笑顔で溢れた毎日が過ごせたらいいなぁ、って」



「ただのアルバイトの私にも、その幸せのお手伝いができたらいいなぁって、

そう、思ったんだ」




ベランダに腰掛けたお母さんの頬に、オレンジ色の夕陽が細い線になって優しく射し込んで、


熟したリンゴみたいに赤く染まっていた真っ白な頬は、口元のはにかみと共に、お母さんの花のように可憐な笑顔を彩っていた。





…Next◆リップ チャンス!◆



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