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2012
0211
Sat
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【 マメシバ 】

新社会人の風早さんが、仕事でなにかミスをしてしまい弱ってたときに、
聖母マリアのように優しく風早さんに寄り添ってあげる爽子をイメージしました。



余談・BGMにはぜひ坂/本真/綾さんの『マメシバ』をどうぞw











「別に、特別なにかあったわけじゃないんだ」




まるでなんでもないみたいに、あなたは受話器の向こうでそう囁いた。











お風呂上がりに二階の自室に上がって、まだ少し湿ったままの髪をタオルで軽く拭いながら、毎日の日課である日記をつけていると、机の上に置いてあった携帯電話が着信を知らせてきた。




「なんだか急に、爽子の声が聞きたくなってさ」


「うん」


「えーと、今なにしてた?あ、この時間なら日記つけてた?いつもお風呂上がりに書くって言ってたよね」


「…うん」


「今日も図書館行ってたの?司書の臨時バイトってどんな仕事してんのか、あんま想像つかないなー」


「…うん…」





翔太くんは、きっと気づいてる。


翔太くんがそっと隠そうとしてる哀しい気持ちの存在を、私はもう感づいてるって。


だけど、なんにも言わずに当たり障りのない話を続けてる。


私に心配かけたくないからって、優しい気持ちで、私を思ってくれてる。




…だけど、だけどね、


翔太くん、わたし、守られてばかりの恋人じゃいやなの。


わたしだって、あなたが哀しい時はそっとそばで寄り添ってあげられるような、そんな存在になりたいの。


わたしが辛い時も、哀しい時も、


いつだってあなたが、そうしてくれるように。







「…わたし、今から行くね」



「急いで会いにいくから、待っててね。すぐに行くよ、走っていくから」






着の身着のまま夜空の下に飛び出して、背後で私を引き留める父の声を遠くに聞きながら、必死で足を速める。


思い切り走って、走って、走って、ようやく翔太くんが暮らすアパートにたどり着いた。


翔太くんの部屋の窓を見上げてみれば、夜なのに電気も点いていないのが目についた。




翔太くん、翔太くん、



いま、そっちにいくからね。







* * *





息を切らしながら彼の部屋のチャイムを押せば、静かにドアが開いて、驚いた顔をした翔太くんが姿を表せた。



「……ほんとに来ると思わなかった……」


「…来るよ。翔太くんのことだもん。どこにいたって、必ず会いにくるよ。誰より早く、翔太くんのこと、抱きしめにくるよ」


「……さわ、こ」


「…覚えててね。ぜったいだよ。忘れないで」


「……さわこ」


「わたし、翔太くんが誰より大事なの。だから、独りで泣いたりしないで」


翔太くんが途端にくしゃりと顔を歪ませて、手のひらで潤んだ瞳を隠すように顔を覆った。



「わたしには、悲しい気持ちを取り除くことはできないけれど、」



強かな両腕が伸びてきて、ぎゅうっと私の身体を抱きしめてきたかと思えば、私の肩に翔太くんの頬が静かに擦り寄った。



「そばにいて、抱きしめて、悲しい気持ちをわけあうことはできるよ」






しばらくして聞こえてきたのは、悲鳴のような微かな嗚咽。


その悲しい気持ちが落ち着くまで、わたしは翔太くんの柔らかな癖のある髪を撫で続けた。





どれくらい時間が経ったかわからないくらい、わたしたちは部屋の真ん中で抱きあっていた。



すっかり泣き止んだ翔太くんは、ちょっぴり目を赤くして、気まずそうに私の顔を覗き込んできた。





「…爽子が来てくれて嬉しかったけど、やっぱ恥ずかしいな」


「どうして?」


「だってこんなん、かっこわるいじゃん。彼女の前でわんわん泣きまくってさ…」



まだ少し涙の跡が残る翔太くんのほっぺたを指先で拭いながら、私はそっと囁いた。




「…翔太くん、なんだか迷子の子犬みたいだったよ」


「……う…。すぐ忘れてよ。恥ずかしいじゃん」



「いやだよぅ、だってとっても可愛かったから」



「うわぁ、最悪!ねぇ、今日の爽子なんかイジワルじゃない?」



「そんなことないよー」





深夜のアパートの一室には、顔を真っ赤に染めた翔太くんと、くすくすと笑いを抑えきれない私の姿。



キッチンからは、ヤカンから湯気が上がる音が聞こえてくる。



お湯が沸いたら、お揃いのマグカップで温かいココアを淹れよう。



ふたり並んでココアを飲んだら、ぽかぽかの暖かい心を寄せ合わせて、小さなベッドで抱き合って眠ろう。




外の空にはもうすぐ、おひさまが昇るよ。


ほらまた、新しい朝がはじまるよ。



きっと、きっと、今日は素敵な日になるね。













行かなくちゃ

深い暗闇に迷い込んだ彼を
誰も助けてくれない

信じてる

いつかこの愛が

傷つき疲れた君を癒す時がくること

だから大きな声で

何度も私の名前を呼んで



かたくなに扉を閉ざした
君の両腕が本当は求めている

私なら愛しさだけで
どんな場所へでも

迷わないで走ってゆける

もっと大きな声で今すぐ

私の名前を呼んで

固く縛りつけてる

にぶい光の糸を捨ててあげる


朝が遠くなっても


雨がたたきつけても



君のもとへ







おわり


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comment
ゆうそう #-
はじめまして。お話読まさせて頂きました。とても楽しかったです。特にマメシバがお気に入りです。原作では風早くんが泣くシーンってないから、ドキドキしました。
また、訪問させていただきます。
2012/02/21(火) 21:33:29 | URL | edit
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