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2011
1224
Sat
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【 クリスマス・タイムトラベル 】*後編*

クリスマス記念小説の後編です~。

しかし私はつくづく未来モノとかSFモノが好きだなあ…。










マンションの室内から顔を覗かせて、ベランダに並んで座り込む風早と爽子を不思議そうに見上げてくるのは、
肩まで伸びた艶やかな黒髪の愛らしいおかっぱ頭に、真っ白い肌、仔犬のように真ん丸く大きな瞳を瞬かせた、五歳くらいの女の子だった。




「こーら、何やってんの。窓開けたら寒いだろー?」

次に部屋の奥から現れたのは、どこか見覚えがある男性だった。

少し童顔気味な顔立ちが、僅かに少年の面影を残しつつ、その整った顔立ちはテレビの中で脚光を浴びる男性アイドルたちにも引けをとらない二枚目っぷりだ。

だが、体つきは落ち着きある大人の男性そのもので、先ほどの少女と瓜二つの瞳をパチクリと見開くと、片手で少女の身体を軽々と抱え上げる。
もう片方の腕には、なにやらクリスマスツリーの飾り付けの途中だったのか、金と銀のキラキラ輝くモールを数本抱えていた。


「まだツリーの飾り付け終わってないよ?パパと一緒に綺麗に飾ってね、ってママに言われただろ?」

「んー、でも、あの…。パパ、あのおにいちゃんとおねえちゃん、だあれ?」


「…え?」



少女が指差す先に、少女の父親が視線を向けると、しばらく硬直状態だった風早と爽子が、揃って身体をビクリと震わせた。



「あ、あ、あ、の…すいません!俺たちはあの、なんていうか決して怪しいもんじゃなくて、気づいたらここに居たっていうか、いやあのなんていうか…その…っ!」



ベランダに佇む制服姿の二人の男女を、しばらくじぃーっと凝視していた少女の父親に向かって、大慌てで弁解を始めた風早は、びしっと姿勢よく立ち上がると、怯える爽子の身体をしっかり抱きしめる。


その時、少女の父親がポツリと小さく呟いた。





「………夢じゃ、なかったんだ」





えっ?…っと風早が聞き返す前に、少女の父親はすごい勢いで背後に振り返ると、なにやら奥のキッチンで料理支度をしているらしい誰かに向けて、威勢よく声を掛けた。




「……爽子!例のあれ、今年のクリスマスだったみたい。急いでなんかあったかいもの用意してやって!」



すると、流し台から聞こえていた水の流れる音がピタリと止まり、穏やかな女性の声で、なんとなく嬉しそうな雰囲気を纏った返事が返ってきた。



「……どうぞ、上がってください!外は寒いでしょう?二人ともブレザー羽織っただけじゃ、凍えちゃうものね」



どうして直接見てもいないのに、自分たちがブレザーを羽織っただけの格好だとわかったのか、

いや、そもそも、先ほどの少女の父親はキッチンにいる女性を「爽子」と呼んでいた。

…それって、


……それって、つまり……、


………どういう、こと?






* * * * *






「………あ、この紅茶、いつもお母さんが淹れてくれる味と同じだ……」


「…ふふ。年に何度か、実家の母が茶葉を送ってくれるの。美味しいよね、このハーブティー」



まだ事態を把握しきれていない風早と爽子だったが、ひとまず少女の父親と母親に促されるまま、居間の食卓テーブルに座り、暖かい紅茶と手作りのクッキーを振る舞われていた。



「……あ、このクッキー…黒沼が作ってくれるのと同じ味がする……」


「爽子は昔から、お菓子作り得意だよな。高校時代からずっと、よく焼いてくれんだよ。このクッキー」


そう言って穏やかな微笑みを浮かべた少女の父親は、膝の上にちょこんと乗せた少女の口元にクッキーを寄せる。少女は嬉しそうに口を開けて、パクリと母親お手製のクッキーを頬張った。



「え、えっと…つまり、あの…お二方は、いわゆるその…未来の私と風早くんの姿だと…いうことに…なるんでしょうか?」


「うん、そーだよ。爽子」

大人の色気漂う未来の風早の口から、ふいに自分の名前が甘い響きを纏って聞こえてきたものだから、爽子はポッと頬を赤らめた。


「じゃあ…俺たちは、高校3年のクリスマスイブから、10年後のクリスマスイブにタイムスリップして来ちゃった、…ってことですか?」


「そういうことらしいの。翔太くん」




未来の爽子は、高校時代と変わらず長い黒髪を緩くひとつのみつあみにして、肩から前に垂らしている。淡いクリーム色の可愛らしいデザインのエプロンは、まさしく爽子が好みそうな感じだ。



「んで、この子は俺と爽子の子ども。名前は…教えてあげたいとこだけど、言っちゃったら未来の楽しみが無くなっちゃうもんな」


「うふふ、そうだね。…この子の名前は、あなたたちが近い将来、一生懸命考えて、たくさんの愛情を込めて名付けた…すてきな名前なんだよ」



そう言って顔を見合せた未来の風早夫妻が、とてもとても幸せそうな微笑みを浮かべていたから、翔太と爽子はふいにツンと鼻の奥が痛くなり、目頭が熱くなった。



「あのね、わたし、わたしのなまえがだーいすきなの。とってもすてきななまえをつけてくれた、パパとママのことも、だいだいだーいすきっ!」



未来の翔太の膝の上にいた少女が、ちまっとした腕を目一杯伸ばして、片腕を父親の首に、もう片方の腕を母親の首に回し、ぎゅうっと抱きしめた。


少女の身体をぎゅうっと抱きしめ返し、未来の爽子がぽつりと囁いた。




「…風早くん、ありがとう。高校時代に、わたしと出会ってくれて。わたしを見つけてくれて。あれからずっとずっと、大切に想ってくれていたんだよね。本当にありがとう。過去も今も、未来もずっと、あなたのことが大好きです。まだまだ未熟なわたしだけれど、いつまでも、どうぞよろしくね」



「…黒沼。ありがとな。俺、高校時代からずっと、わがまま言って黒沼を困らせてばっかなんだけどさ、黒沼はいつだって俺のこと大事に想ってくれてたよね。本当に感謝してる。まだまだ黒沼の強さには届かない俺だけど、ずっとずっと大好きだよ。ずっと、ずっと、大事にしていくからね」



未来の自分たちの言葉は、高校生の風早と爽子の胸をじわりじわりと幸福でいっぱいに満たしていった。

窮屈に感じるくらいに、何か暖かい気持ちが心の中に溢れ出してくる。
うっかり気を抜くと、今にも涙腺が弛んでしまいそうで。二人はただ、こくんと小さく頷くことしか出来なかった。



「…さ、そろそろ時間切れかな」


「…そうだね。じゃあ……お兄ちゃんとお姉ちゃんに、お別れのあいさつ、できるかな?」


未来の爽子が、父親の膝の上の少女を優しく促して、少女はピョコンと床に下り立つと、トコトコと風早と爽子のそばに立った。



「……おにいちゃん、おねえちゃん、また、あおうね!」




また、逢おうね。





きっと、また、逢おうね。






眩い光が強く風早と爽子を包み込み、瞬きをしている間に、暖かくて幸せな家族の風景は、パチンと瞼の裏に消え去ってしまった。







* * * * *





「…おいコラ、翔太!黒沼!いー加減、目ェ覚ませってんだよ!」


「……ちょっとピン!乱暴に扱うのやめてよ!…ねぇ、やっぱり救急車呼んだほうがいいんじゃないの?頭とか変なとこ打ってたらどうすんのよ!」



どこか遠くの方で、あやねとピンが元気に口論しているのが聞こえてくる。


ツンと鼻を掠めた香りは、覚えのある保健室の薬品の匂いだ。



風早と爽子は、二人同時に目を覚ました。


階段から落ちた時に繋がれた手のひらは、しっかりと繋がれたままになっていた。


「…あっ!爽子!風早!」


「おっ…よーやく目ェ覚めたか。ったく、無駄に心配させやがって」


「ピンと龍がね、あんたたち二人をここまで運んでくれたのよ。今、ちづがお互いの家に連絡してくれてるから、もうすぐ迎えが来ると思うわ」


「つーかよ、お前らいっくら引っ張っても繋いだ手ェ離さねーのな。気絶してる間までイチャコラしてんじゃねーよっ」



わあわあと騒ぎたてるピンとあやねに向かって、呆れたように保健医の女性教諭が小さく叱っている。



風早と爽子は、未だに夢見心地の気分なまま、お互い静かに顔を見合せた。



「……夢、かなあ」


「……夢、じゃなかったら…いいよね」


「……うん、そうだね……」



暖房がよくきいた暖かな保健室の窓の外。


見えた冬の夜の雪景色には、あの時、どこかのマンションの暖かな居間から見た景色と同じように、柔らかで優しい粉雪がふわふわと舞っていた。








*おわり*


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