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2011
0523
Mon
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風早くんの恋人 ~さいごのよる~



前回の更新日みたら去年8月だった…愕然としました。
す、すみません……。




なぜか無駄にシリアス展開になっております。






突然、苦しそうに荒い呼吸を繰り返して、額に冷や汗をかき始めた爽子を手のひらに乗せて、翔太は大急ぎで帰路についていた。


「……黒沼、もう少しで家着くから!もうちょっとの辛抱だからね!」


「……はぁっ…は、っ…ん、ぅ…っ…かぜは、や…くん…」


風早の手のひらの上の爽子は、相変わらずもがき苦しみながら、両手で胸元をきつく抑えている。


「…黒沼?胸が苦しいの?」


「…う、っ…んっ…はぁっ…な、なんだか…心臓が、すごく…痛、いのっ…」


無事に家に着いたとしても、爽子を楽にしてやれるかどうかはわからない。翔太に出来ることは、せいぜい柔らかな布団の上に横にならせてやれるくらいだ。



ふと気付けば、駆け足で進んでいた路地に、見覚えのある屋台が留まっていた。

胡散臭そうな中年の男性が、何やら怪しげなお菓子を店頭に並べている。



「……おじさん!!」



ダッシュで屋台に近づいていくと、確かにあの日、二人に怪しげなクッキーを手渡した男性店主が顔を上げた。



「……ああ、キミらはいつぞやの学生カップル…」


「どーしてくれるんだよ!あんたのわけわからんクッキーのせいで、黒沼が、黒沼が……!!」


「………むむ、クッキーの効果が切れかかってんな、こりゃ」



すごい勢いで店主を責め立てる翔太を無視して、翔太の手のひらの中の、小さな姿になった爽子を覗き込むと、店主の目付きが鋭く変わる。



「…クッキーの…効果…?」


「あのクッキーは試作品みたいなもんでな。効果は数日間で、期日までに元に戻る作用付きのクッキーを食べなければ、アンタの恋人は……」


うむむ、と立派に蓄えた顎ひげを一撫でして、店主はしばし黙り込んだ。


「かわいそうに、心臓が元の大きさに戻ろうとしてるんだ。早くお嬢さんを元の身体に戻してやらんと…」


「どうやったら戻るんだよ!?このままじゃ、黒沼は……っ!」


想像もしたくない結末が一瞬、脳裏をかすめて、翔太は慌てて頭を振った。


「元に戻るクッキーを食べれば、たちまち元通りの身体に戻る」


「じゃあ早くそのクッキーを……!」


「…無理だ」


「はっ!?」


「ウチで扱ってる商品は輸入品でな。元通りクッキーは在庫が切れてるから取り寄せないと…」


「…はぁっ!?」


思わず身体の力が抜けて、ガックリとその場にしゃがみ込んでしまった翔太を見かねて、店主が声を掛ける。



「なんとか明日中には届くように手配するから。それまで、お嬢さんを預かっててやってくれ」


「……本当に…明日には黒沼は元に戻れるんですか」


「ああ、約束する。…それからな、お嬢さんにとっちゃ今晩はちと苦しい夜になるかもしれん。高熱が出たら、ギリギリまで期日が迫ってる証拠だ」









店主の言葉通り、その日の晩から明け方まで、爽子は高熱で寝込んでしまった。


翔太のベッドの中で荒い呼吸を繰り返す爽子の額には、たっぷりと汗が浮かんでいる。

冷水に浸かったハンカチをぎゅっと絞って小さく畳み、爽子の額を優しく拭う。

ふと爽子の睫毛が震え、爽子の瞳が微かに開いた。



「…か、ぜはや…くん…」

「…黒沼…」


爽子の頭を撫でていた翔太の指先を、微かな力できゅっと抱き締めて、爽子は熱い息を吐いた。



「……わたし、がんばるよ……」


「……あした、クッキー、食べれるまで、がんばるから……」




「…だから……しばらく、こうしてて……」




時刻は、深夜2時。


翔太の手のひらの中で、爽子は再び、静かに眠りについた。












つづく

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