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2010
0708
Thu
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【*桜花咲きそめにけり*】 *第十一幕*


平安パロシリーズ、第十一幕です。

今回から健人が出てきます。
でもあんまり波乱な展開にするつもりはないんですが……はてさてどうなることやら( ̄▽ ̄;)



本編は追記から。

















父から見合いの話を持ち掛けられた日から、三日が経った。

驚いたことに、あの日から翔太は一度も風早の屋敷に帰ろうとはしなかった。

翔太曰く、「風早家とは絶縁した」とのことだが、爽子は大層心配した。

なにかと、翔太に「ご両親がご心配なさっているから」とか、「この屋敷に居座ってしまっては、翔太の体裁が悪くなる」などと訴えかけ、「一刻も早く風早の屋敷に帰ったほうがいい」と勧めた。

だが、そんな爽子の話には翔太は一切、耳を貸さなかった。


自分はもう、風早家に戻るつもりはない、というのだ。


爽子は大変困惑した。翔太が実の父親と不仲であることは承知していたことだったが、翔太がここまで頑なに実家に帰ることを拒むことはなかったというのに。


「……父上様と、なにかあったのですか?」


爽子が恐る恐る問いかけると、無心に朝食を食べていた翔太が口元に米粒をくっ付けながら顔を上げた。


「………喧嘩した」


それだけポツリと言って、お膳に乗せられた小鉢に盛ってある胡瓜の漬物をポリポリと噛み砕く。


「で、でも…今まで父上様と喧嘩なさっても、お屋敷に戻らないなんて言い出したことは無かったではないですか…っ」


「…婚約の話を破談するつもりはないって言うんだよ。あんな頑固親父に従うのはもうこりごりなんだ」


「…ですが…父上様は、きっと…翔太さまがわたくしと結婚することは、認めてはくださらないですよね…?」


「……そこなんだよなぁ…」


味噌汁をずずずと啜った翔太が、はぁー、と重たい溜め息をついた。

梅との婚約を断固拒否してきたはいいものの、対立している派閥同士に属する自分と爽子の関係は、父親としては決して許せるものではないだろう。

だからといって、翔太は爽子と結婚することを諦めるつもりはなかった。
爽子と結婚できないというなら、一体誰と結婚するというのか。



「……いずれは、絶対に認めてもらうから」



…その日が来たら、正式に求婚するつもりでいるからね。



「……覚悟していてよ、爽子姫」



翔太はにやりと不敵な笑みをこぼしたが、「…翔太さま、ご飯粒が付いております」と可笑しそうにクスクス笑いながら翔太の口元に手を伸ばした爽子のおかげで、あっさりと形勢逆転してしまったのだった。








「……ずいぶん上等な着物だな。どこか出かけるのか?」


爽子の床の間で、綾音と千鶴の二人係りで爽子の長い黒髪を結わえているのを眺めていた翔太は、不思議そうに問いかける。


綺麗に結わえられた爽子の黒髪に、高級そうな簪を刺していた綾音が、コホンと何かを誤魔化すようにわざとらしく咳をした。



「黒沼の本邸の方で、親族の間でのちょっとした催しがあるらしくて。先日、お父上様がわざわざ誘いにいらっしゃったのでございます」


「…ああ、あれはそういう誘いだったのか」




「本当は、本邸なんかに出向きたくなんかないんですけどね。…姫様がどんなにぞんざいな扱いを受けるか…本邸の女房が姫様をどんな顔で見ることか…まるでおぞましい怪物でも見るみたいに!…ご子息様にも見せてやりたいですよ」


爽子の唇に、桜色の口紅を塗ってやりながら、千鶴が頬を膨らませた。

艶やかな菫の花があしらわれた着物を纏う爽子の腰に、お揃いの帯を巻いて後ろで上品に花の形に結んでいた綾音も、まったくだと言わんばかりに顔をしかめた。



「……仕方ないわ。お父上様のご命令だもの。出向かないわけにはいかないわ」



全ての準備が整った頃、ちょうど屋敷の玄関に本邸から使いに出された牛車と何人かの女房が、爽子たちを迎えにやってきた。



「…本当に綺麗だよ、爽子姫。たとえ、そなたの親族にも見せたくないな…ひとりじめしたいよ」

「まぁ…翔太さまったら…」


「早く帰ってきてくれ。そなたがそばにいないと、寂しくて落ち着かないんだ」


甘酸っぱい空気を辺り一面に漂わせながら、翔太と爽子は二人だけの世界に入り込んでしまっている。


その甘い空間を遠巻きに眺めて、千鶴が「うぎゃあああ」と悲鳴を上げた。


「甘酸っぱい!ゲロ甘い!なにこの空気!耐えらんない!」


「ほっときなさいよ。いつものことじゃない」




そんなこんなで、爽子と綾音と千鶴の二人の女房を乗せた牛車は、黒沼の本邸へと走り始めた。






牛車が黒沼の本邸の門の前で静かに停車した。


爽子は静かに開かれた車の扉から降りて、綾音と千鶴と共に、門の下をくぐる。


すると、玄関の扉が開いて、見知らぬ青年がニコニコと手を振りながらこちらに近づいてきた。

青年はタレ目の瞳をふにゃりと細くさせて、やたらと女受けしそうな甘い微笑みをたたえている。
綺麗に調えられた髪の毛は珍しく明るい茶色をしていて、青年の軽やかな雰囲気を増幅させていた。



「やあ、はじめまして、爽子姫。俺、三浦健人。よろしくね!」



健人のあまりのノリの軽さにびっくりしている爽子の右手を、そっと持ち上げた健人は、いたずらっぽい目をして白い手の甲にチュッと口付けた。



「お会いできて光栄だよ。呪い持ちの鬼姫だっていうから、どんな不細工な人かと思ったら、大層な可愛らしい姫様じゃないか」



爽子の小さな顎をくいっと持ち上げて、品定めするようにジロジロと眺める健人を、爽子の一歩後ろから傍観していた綾音と千鶴は、二人同時に同じことを思ったのだった。





(……風早のご子息様、こんな光景を見たら嫉妬で怒り狂うだろうなあ……)













第十二幕につづく


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