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2010
0707
Wed
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【*桜花咲きそめにけり*】 *第十幕*

平安パロシリーズ更新です。


なんとなく全部で十五幕くらいで終わらせられたらいいなーと思っとります(`・ω・)


ついっ太での翔太様人気が凄まじくて、原作本家の風早が嫉妬しそうな勢いですw





では本編は追記から。
















霧雨に濡れた単をそのままに、翔太は前髪から雫を滴らせながら、馬から降りて爽子の屋敷の門をくぐった。


御簾を荒々しく押し上げて、翔太は爽子の名を呼ぶ。


「――爽子姫!」



襖がそっと開けられて、突然の翔太の訪問に驚いた爽子が顔を出した。


「…まあっ、翔太さま…!ずぶ濡れではありませんか!」


慌てて翔太を部屋の中に招き入れて、爽子は腕を伸ばして雨に濡れた翔太の単を脱がせた。

ぷるぷると頭を振って雫を飛ばす翔太の仕草は、どこかびしょ濡れの子犬が体を振って身震いする様子を連想させて、爽子はくすりと笑った。


「雨降りなのに、こんな薄着で…今日はもう、いらっしゃらないかと思っていました」


「……なんだよ、俺がそなたを訪ねてきてはダメか?」


「そっ…そんなことはっ!…でも、こんな無茶をして…翔太さまがもしお風邪を召されでもしたら…っ」


「…大丈夫。俺、体は丈夫だから」


にひっと笑って、翔太は爽子の右頬にちゅうっとキスを落とした。



「…っか、からかわないでください…っもう…っ!」


奥の方の桐の箪笥の引き出しから、爽子が身繕った翔太のための単を取り出して、そっと翔太の腕を通して着させた。



「…さすが爽子姫だな。長さも丈もピッタリだ」


「…よかった…このお色、やっぱり翔太さまによくお似合いです」


「…ありがとう」


真新しい単を身に付けて、翔太は爽子の腕を引いてぎゅうっと抱きしめた。



「…しょ、しょうたっさま…?」


「そなたは…いつも良い香りがするな…」


鼻先を爽子の長い黒髪に埋めて、翔太は心地良さそうに爽子の香りを堪能した。


「…あ…寝るときにいつも、桜の香を焚いて単に匂いを付けているので…髪に香りが移ったのかも…」


「…俺、この香りが好きなんだ」


ぎゅうっと強く爽子の体を密着させると、翔太の腕の中で爽子が「く、くるしいです…」と苦笑いした。



「…あらっ、ご子息さま!いらしてたんですか」


床の間の襖が開けられて、綾音がひょこりと顔を出した。


「…あっ、綾音ちゃん…この翔太さまの単、乾かしておいてくれるかしら?雨にあたってしまって…濡れているの」


「…承知しました。ところで姫様…お邪魔して申し訳ありませんが、お客様がお出でになってます…」


爽子から翔太の湿った単を受け取った綾音が、どこか憂鬱そうに顔をしかめた。


「…まあ…こんな雨の日に?どなたかしら…」


「…それが…黒沼の本邸のお父上様が…なにやら姫様に話があるとかなんとか」


「えっ…お父様が?」



爽子は驚いて目を見開いた。本邸の父親は、爽子を街の外れのこの屋敷に追いやってから、一度もここに訪れたことはなかった。
父親自ら訪ねてくるくらいなのだから、よっぽどの要件なのだろうか。



「…今行くわ。…翔太さま、申し訳ありませんが、ここで少々お待ちくださいませ」


爽子は翔太に軽く会釈すると、襖の奥の綾音に続いて部屋を出ていった。






爽子の床の間から渡り廊下を渡って、客間の襖を開けると、そこにはすでに湯飲みの茶を啜っている父親の姿があった。



「…おお、来たか、爽子。しばらくだったな、元気だったか」


「お久しぶりでございます、お父様」


爽子はその場で深く一礼をしてから、父親の前に腰を下ろした。



「なにやら、わたくしにお話があるとか…?」


「ああ…なんだ、まあ突然な話で悪いのだが…」


父親は少々、話し難そうに重たい口を開いた。



「…お前に、縁談が来ておる」


「……!」



傍らに並んで座っていた綾音と千鶴が、驚いて顔を見合わせた。



「縁談…なんて…、こんな呪い持ちの姫を嫁に貰いたいなどというお方が、いらっしゃるのですか…?」


「…それが、わしも驚いたのだが…。お前の呪い持ちのことを話しても、向こうが一度お前と会ってみたいと申しておるのだ」


「まあ…酔狂なお方ですね…」


「…それだが。突然ですまんが、三日後に、黒沼の本邸で見合いをする約束をしてきたのだ。もちろん、顔を出してくれるな?」


「え…でも、わたくしは…あの…」


すぐに翔太のことが頭を過り、爽子が困惑して顔を曇らせた。


「…なんだ。都合でも悪いのか?」


「…はあ…あの…」


「ああそうだ。相手のご子息だがな。三浦ご一家のご子息で、お前と同い年だそうだよ」


三浦一家といえば、黒沼と同じ派閥の、この辺りではそれなりに名のある一家である。
爽子も名前だけは耳にしたことがあった。



「とにかく、三日後にここに牛車と使いの者を寄越すから、いちばん上等な着物でこちらに出向くようにな」



爽子の有無も聞かずに、父親は言いたいことだけ告げると、そそくさと屋敷を後にした。



「…姫様…どうなさるのですか?」


千鶴が心配そうに爽子の顔色を伺っている。


「…父上様のご命令なら…仕方がないわね…」


爽子姫は一つ深い溜め息を吐いて、綾音と千鶴に向かって指示を出した。



「薄紫の菫の花があしらわれた、上等の単があったでしょう。それから、お揃いの帯と勾玉の簪(かんざし)を用意しておいてちょうだい」



「……姫様…あの……風早のご子息様に、このことは…?」


綾音が青い顔で爽子にそっと問いかけた。



「……そうね……」


爽子は少し俯いて、己の感情を制御するように瞼をきゅっと瞑った。



「……黙っておいた方がいいわ…余計な心配を掛けてしまうもの……」



いつからか爽子の膝の上で丸くなっていた飼い猫のマルが、切ない音色で首に巻かれた大きな鈴をちりりんと鳴らした。












第十一幕につづく



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