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2010
0526
Wed
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【*桜花咲きそめにけり*】 *第六幕*



平安パロの第六幕です。

この回から、じわじわと翔太と爽子姫の恋路の雲行きが怪しくなってきます。ふふふ…。


ところでこの連載、何話くらいで終わるんでしょw
まだなんにも決めてませんw予定は未定ですw




では、本編は追記からどぞ。














「――だから、前にも俺はお見合いはしないと言ったはずです!」


とてつもなく広い敷地を陣取る風早家の屋敷の一室から、不機嫌そうな翔太の怒鳴り声が聞こえてきた。

翔太が眉を吊り上げてまっすぐ見据える相手は、翔太の実の父親である。
父親は唇を真一文字に結び、ここは一歩も譲らないぞというような頑固さを感じさせる決意に満ちた表情で翔太の行く先を仁王立ちで塞いでいた。


「お前もわからんやつだな…」

「わからんやつで結構ですので、そこをどいてください」

「これから見合い相手の姫君のご一行がおみえになるのだと言っただろう。だいたい、そんなに急いでどこへ向かうつもりだ」

「……父上には関係の無いことです」

「……女房の話では、お前は最近、毎日のように朝から晩までどこかへ通いつめているらしいな?…まさか、気に入りの女の元に行っているのではあるまいな?」

「……っ、…そこをどいてください」

「図星か?…相手は私に言えないような立場の姫君か何かか。…大方、左大臣派の奴らの娘あたりか?」

「………どいてください、父上」

「そんな奴らの家計の娘を嫁にするなんぞ、私は決して認めんぞ!お前は黙って私の決めた相手と結婚すればいいのだ!くだらん茶番のような交際なんぞやめてしまえ!」

「…………失礼します。急いでおりますので」

「……こら翔太!待たんか!まだ話は終わっとらんぞ!待てと言っとろうがっ―――」


カンカンに怒った父親の姿を背に、翔太は踵を返して早足でその場を去っていった。父親が追いかけて来ないうちに、大急ぎで沓(くつ)を履き、愛馬に跨がると颯爽と四条の爽子姫の屋敷へと馬を走らせた。



やはりというかなんというか、息子の恋人が左大臣派の者だとわかった父親の反応は、翔太の想像した通りのものだった。
だが、父親がなんと言おうと、翔太は爽子以外の姫君と結婚つもりは一切無かった。
翔太が恋をするのは今までもこれからもただひとり、爽子だけだし、これから先も一生、爽子以外の相手を愛するつもりもまったく無い。
誰がなんと言おうと、俺は爽子姫と結婚する。
…たとえ、風早家と離縁することになったとしても……――。







「……あっ…風早さま!」

翔太が物思いに耽りながら馬を走らせていると、向かい側から見慣れない牛車がやってきた。
牛車は翔太の横で静かに動きを止めると、中からひょこりと見知らぬ姫君が顔を覗かせた。


「はじめまして、風早さま。あなたさまの許嫁の、胡桃沢家から来ました、梅と申します」


梅と名乗ったその姫君は、どこか西洋系の顔立ちをしていた。小さな色白の顔に大きな焦げ茶色の瞳、今時珍しいふわふわとウェーブがかった茶髪の長い巻き髪。身に纏った紅色の単(ひとえ)に組み合わせた、渋みがある薄い緑色の袿(うちき)が良く似合っていた。
許嫁、という先ほどの梅の言葉に、翔太はぴくりと反応した。


「…俺は、許嫁なんて了承していないが」

「…あら、そうでございましたか?お父様が、風早家のお父上様と子息の翔太さまが喜んで了承されたと仰っておりましたが…」

「……俺の居ない間に、勝手に話が進んでいたみたいだな……」


翔太はくしゃりと片手で前髪を掻き上げると、はあ…と大きなため息を吐いた。


「………悪いけど、」


翔太はまっすぐと梅の大きな瞳を見つめて、揺らぎのない決意の声色ではっきりと告げた。



「俺にはもう、心に決めた愛する姫君がいる。申し訳ないが、そなたとのことは、無かったことにして頂けないか?」


突然の翔太の宣言に、梅はしばらく絶句していたが、何か言い返そうと金魚のように口をぱくぱくとする。
その間に、「では、俺は先を急ぎますので」と翔太は再び馬を走らせて、少し先の曲がり角に姿を消してしまった。



「………諦めないわよ………!」



ぽつんと一人取り残された梅が、鋭い瞳に暗い影を落としながら、低く呟いた。


「………どんな手を使ってでも、風早さまを手に入れてやるわ……!」




不穏な空気を知らせるように、道端に咲いていた菫の花が、ぶわりと乱暴な風に飛ばされて花びらを散らばせていた。





* * *





「……おいでなさいませ、翔太さ、ま――……っ!?」


「………爽子姫……っ!!」


突然、慌ただしく御簾が跳ね上げられたかと思えば、ひどく険しい表情をし翔太が現れた。
爽子の出迎えの言葉が終わらぬうちに、荒々しく爽子の甘い桜の香りがする柔らかい体を引き寄せて、無我夢中で掻き抱く。


「…翔太、さま…?…どうかなさいましたか…?」


困惑した爽子が、おろおろとした仕草で行き場のない両腕を慣れない手つきで翔太の背中にまわした。

翔太は爽子の首筋に顔を埋めて、しばらく微動だにしなかった。爽子の香りを感じてようやく落ち着いたのか、ゆっくりと顔を上げて、ゆらゆら揺らめく爽子の漆黒の瞳を見つめた。



「……爽子姫、」


「……はい…?」



息つく間もなく、二人の距離はゼロになった。
柔らかい感触が唇に触れていたかと思った瞬間に、その温もりは離れていった。

何がなんだか解らずに、ただただ頬を熟した林檎のように真っ赤に染めた爽子の、サラサラとした髪の毛を指で弄びながら、翔太は意思の隠った口調で静かに告げた。




「……――俺には、そなただけだ……」



御簾の向こうの庭に咲き誇る八重桜が、ぶわりと春風に煽られて花びらを散らした。

桃色の花びらは縁側を越えて部屋の中にまで舞ってきて、二人の周りをひらひらと飛んでいる。

翔太は熱っぽい目線で爽子を見つめながら、そっとその絹のように白い手をとって、指先にふわりと口付けた。




「―――…俺は、そなたを愛している」











*第七幕につづく*



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