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2010
0131
Sun
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【*桜花咲きそめにけり*】 第二幕


とりあえず展開が浮かんだら即書いてアップする、
取って出し(というのか?)方式でいきますこの連載w

前回は風早視点でしたが、今回は爽子視点でお送りします。


尚、お気づきの方もいるかと思いますが、
この平安パロ連載は私のお気に入りの文庫である、
『桜嵐恋絵巻』シリーズからインスピレーションを受けて生まれたお話です。

平安時代の知識なんぞ皆無な私が、参考書としてこの本を見返しながら執筆しているため、
平安時代の独特の用語などは全て『桜嵐恋絵巻』から拝借したものだったりします。

なんか見たことあるなこの描写…と思っても、生暖かく見守ってやってくださいませ…w




ではでは、本編は追記からどうぞ~。













京都の四条通りに沿って、長々と隔てられた塀の中。
四条の街の中でも、一段と目立つ大きな屋敷が悠然と佇んでいた。

そんな黒沼家のお屋敷といえば、この辺りでは知らない者がいないほどの有名な財閥の一家である。

その一家の一人娘である爽子には、昔から真しやかに付きまとう噂話があった。

はじめは、爽子の少々陰気な雰囲気をからかった家の女房が、
『姫様はまるでお化けのように陰気な方ね。本当は幽霊なのではないかしら?』
と面白がって口走ったのがきっかけだった。


その話は瞬く間に屋敷中に知れ渡り、噂話にはたくさんの尾ひれがついてしまっていた。
そのうちに、噂話は屋敷の外へも流れだし、いつしか四条に住む誰もが黒沼の姫を恐れてしまうようになってしまっていた。


『黒沼の家の姫様は、この世に未練を残した幽霊に呪われていて、姫様と話すと呪いが伝染するらしい』

とかなんとか、それらは、まったく嘘も甚だしい下らない噂ばかりだった。
ところが、ただひとりの愛娘の噂話に、世間での自らの印象が悪くなるのを恐れた爽子の父は、
黒沼の屋敷から随分と離れた四条の外れに、小さな別荘を用意した。

「馴染みの女房も二人付けるから、不自由は無かろう。離ればなれになってはしまうが、どうか元気に暮らしておくれ」

爽子の父が、別荘に旅立つ愛娘に贈った言葉である。


要するに、実の父の邪魔者扱いを受けた爽子は、言われるがままに居所を四条の外れの別荘に移した。

一緒に付いてきてくれたのは、幼少の頃から常に共に育ってきた同い年の『千鶴』と『綾音』であった。

爽子を信頼しきっている二人は、実父の勝手な都合で別荘に追い出される爽子を可哀想に思い、彼女と共に生きていくことを決めたのだった。



この別荘に移り住んでから早二ヶ月、爽子は別荘での暮らしに何一つ不自由していなかった。

一緒に付いてきてくれた千鶴と綾音は、爽子に寂しい思いをさせないようにと、なにかと気遣ってくれたしし、
ここに移り住んできた時に迷い込んできた野良の黒猫という可愛いペットもできて、爽子は寂しい思いもせずに日々を送っていた。





ある晴れた日のこと、気持ちのいい春晴れの天気に誘われて、爽子は庭先の縁側から八重桜を眺めていた。

爽子のお気に入りのこの大きな八重桜は、本家を追い出される孫を不憫に思った祖父が贈ってくれたものだった。

四月になってから、見事に咲き誇る桜は、まるで爽子を励ますように花弁の雨を降らせてくれている。

その綺麗な薄桃色の花弁を手にしたくなって、爽子は思わず庭に足を踏み入れた。

どこかふわふわと夢見心地な気分で、柔らかく咲き誇る八重桜を見上げていると、強い春風が爽子の長い黒髪を吹き上げた。


「…きゃ…っ」


慌てて片手でこめかみを抑えようと振り向くと、塀の向こうから熱い視線を感じた。

ふと目線を上げると、見覚えのない青年がこちらをじっと見つめていた。

まっすぐな黒髪を春風に靡かせて、黒く澄んだ瞳で見つめられ、爽子は思わず頬を赤らめた。


年は同じくらいだろうか。背丈は青年の方が爽子の頭一つ分大きいものの、面影はまだ少年のあどけなさを残していた。



「あの……なにか、ご用がおありでしょうか?」



とりあえず何か話しかけなければと、爽子が塀の向こうの青年におずおずと話し掛けた。


問い掛けられた翔太は、びくりと肩を震わせて、少し狼狽えたように片手で髪をくしゃりと撫でた。


「え…あ、いや…その…」


きょとん、と不思議そうな眼でこちらを見つめてくる爽子の視線がくすぐったくて、そっと目線をずらした。


「く、黒猫が…たまたま目に入って…」


「黒猫…。あ、わたくしの飼い猫でしょうか…鈴の付いた…」


「ああ、うん。鈴の付いた黒猫。そいつが塀の上から俺を呼ぶみたいに鳴いたから、なんだか気になって…」


「…はあ…そうでしたか…」


「…って、すまない!こんな覗きのようなことを…驚いたよな?」


「いえ…あの、この辺りではわたくしに話し掛けてくれる方はいらっしゃらないので…」


「えっ?…どうして?」



…この方は、わたくしの噂話をご存知ないのかしら…。


爽子は不思議に思うものの、ほんのり悲しげな微笑みをたたえながら、翔太に自らの世間の評判を話して聞かせた。




「…それって、本当のことなのか?」



全てを聞き終えた翔太は、開口一番にこう言った。



「…その噂、ぜんぶ本当なのか?」



あまりにまっすぐな瞳に問い掛けられて、爽子は戸惑った。


やがて、俯きながらもやんわりと首を横に振った。


「…すべて、噂話です。本当は、わたくしはただの黒沼家の一人娘です」


陰気な雰囲気は、生まれつきで……。


寂しそうにぽつりぽつりと呟く爽子を見て、翔太は励ますように明るく告げた。


「それなら、なんの問題もないな!」


「え…?」


「俺にとっては、ただの可愛い姫君にしか見えない。噂話なんて、当てにならないな」



翔太があんまり優しく微笑むので、爽子は思わず胸が震えた。



嬉しかった。


はじめて、自分の存在が認められたような気がして。


実の父親までもが恐れ遠ざけた自分を、このひとは笑顔で受け入れてくれた。



まるで、いてもいいんだよと、優しく諭すように。




爽子は胸をぎゅっと押さえて、鳴り止まない胸のときめきをひしひしと感じていた。





「わたくしの名は…黒沼、爽子と申します」



あなた様の名は、なんとおっしゃるのですか?



ほんのりと漆黒の眼に涙を溜めた爽子の問いに、翔太は爽やかなお陽さまのような笑顔で答えた。




「…翔太。風早、翔太。よろしくな」




差しのべられた大きな手のひらに、爽子はその小さな白い手でそっと触れた。











*第三幕につづく*



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