--
----
--
tb* -
com*-

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2009
1202
Wed
tb* -
com*0

【 ほんとのきもち 】


おそらく初めて書いたであろう風爽←ケント話。


ケントの切なくも叶わぬ片思いです(´・ω・`)/~~




危ない危ない、忘れるとこだった…!
龍、お誕生日おめでとー!!
(23:49追記)



ではでは、本編は追記からどーぞ☆









風早と爽子が付き合い初めてから、二年目の初夏が巡ってきた。

二人は大学生になり、遠距離恋愛に突入したものの、決して順調とは言えない彼との関係。

爽子は、自室の窓から明るい星空を見上げながら、もう何度ついたかわからないため息をひとつ吐いた。


「……風早くん…」


呼び掛けた切ない呟きに、返ってくる言葉はない。

滲んでくる涙は止められずに、爽子はたまらずきゅっと唇を噛んだ。


風早と爽子は、北幌高校を卒業した後、別々の進路に進んだ。


風早は、獣医になる夢のために、難関である札幌にある有名な医大に見事合格し、札幌で一人暮らしをはじめた。
一方爽子はというと、学校の教師を目指して、地元から少し離れた大きな街にある教育大学に進学した。


二人が連絡を取り合わなくなってから、すでに二週間が経過していた。
きっかけは些細なことだったように思う。
風早のバイトが忙しく、いつも連絡するのは爽子の方からだった。
ある日、いつものように電話をしていて、風早が疲れと睡魔に打ち勝てずに電話しながら寝てしまったことがあった。
それ以来、爽子は風早に電話するのを躊躇するようになっていた。学業と仕事で疲れている上に、自分と話すことで風早の疲れを増加させるようなことがあったら、とてもいたたまれない。



「…気分転換に、散歩でもしてこようかな…」



クローゼットから薄手のカーディガンを取り出して、ふわりとそれを羽織ると、携帯と財布をポケットに入れた簡単な格好で、爽子は両親に断りを入れてから、漆黒の闇の空に、月と星の光が瞬く夏の夜道に足を踏み入れた。


近所にあるコンビニで温かいミルクティーの缶を買って、たまたま見かけた公園のベンチに座る。


「…ここの公園…、放課後に風早くんと来たっけ…」

ブランコに二人乗りしたり、後ろから抱きしめられながら滑り台で遊んだことがあったっけ。


懐かしい記憶に身を委ねていると、カーディガンのポケットに入れた携帯が、着信音を鳴らしながらブルブルと震えていることに気付いた。

携帯を取り出して画面を見てみれば、「三浦健人」と発信者の名を示していた。
久しぶりに見たその名に驚きながら電話に出ると、高校時代からまったく変わらない陽気な声が聞こえてきた。


『…もしもし、貞子ちゃん?』

「も、もしもし師匠?どうしたの?久しぶりだね!」

『ははは、まあまあ。……ところでさ…ちょっと顔、上げてみて』

「…………えっ?」


爽子は俯いていた顔を上げて、公園の入り口に目を向けた。

するとそこには、都会っぽさが感じられるお洒落なリュックサックを背負い、爽子と目が合ったことに気付いて、得意そうにちょこんとウインクする三浦の姿があった。





「…し、ししょ…三浦くん、いつ東京から戻ってきたの?」

「つい昨日だよ。早めの夏休みなんだ。あんまり長くはいれないんだけど、どうせなら皆の顔が見たくってさ」


三浦は、美容師になるために東京の専門学校に通っている。高校を卒業して以来、一度も北幌に帰ってきたことがなかったので、突然の帰省に爽子は驚いていた。


「しばらく懐かしい街並みを眺めて歩いてたら、公園にポツンと座る女の子が見えてさ。こりゃ声かけなきゃって思ってよく見たら、ナント貞子ちゃんなんだもんなー」


びっくりしたよ、と笑いながら爽子を横目で見やり、急に神妙な顔つきになったかと思えば、三浦は静かに口を開いた。


「……さっき、なんで泣いてたの?」


三浦の問いかけに、爽子は思わずぴくん、と反応してしまった。見られていたのか。
途端に恥ずかしさと情けなさが胸に込み上げてきて、爽子は必死に首を振って「なんでもないよ!」と誤魔化した。


「……もしかして、風早となんかあった?」


ずばり図星を突いてくる三浦の指摘に、爽子はわかりやすく沈黙してしまう。
すると、三浦は呆れたようにくしゃりと笑みを漏らして、ゆっくりと優しく爽子の頭を撫でた。


「なにがあったかは詳しく訊かないけどさ…、」



素直に気持ちを伝えなきゃだめだよ、爽子ちゃん。


普通のひとの何倍も気を遣いすぎちゃうのは、爽子ちゃんの悪い癖だからね。



はじめて、あだ名ではない下の名前を呼ばれたことに気付いていたけれども、爽子はなにも言わずにただコクンと頷いた。

師匠には、昔からなにもかもお見通しなんだよなあ。

自分を見つめてくる三浦の優しく微笑んだ顔が、次第に涙で歪んでくるのを感じた。

瞬間、ぽろぽろと大粒の涙が爽子の白い頬を濡らした。


「わわっ貞子ちゃん!?ごめんね、オレ泣かしちゃった!?」

「…う、ううんっ…違うの…ごめんなさい、私…嬉しくて…!」


すると、爽子は涙に濡れる瞳をそのままに、しっかりと三浦を見つめて花のようにふんわりと微笑んだ。



「……ありがとう、三浦くん……!」



…沸き上がった衝動は、自分では止められなかった。

気がついた時には、爽子の身体は三浦の大きな腕に抱き寄せられていた。


「……み、みうらくん…!?」



その時、爽子が口を開くのと同じタイミングで、爽子の携帯がけたたましい着信音を鳴らした。

爽子が慌てて携帯を取り出せば、画面に示された発信者を見て顔を強張らせる。

「……か、風早くんだ……」


信じられない思いで、ただ携帯を見つめる爽子に、三浦は早く電話に出なよと促した。


「……風早から、釘刺された気分だな……」


そこらへんは、昔から抜かりないヤツだったもんな。
三浦の小さな呟きは、必死で携帯に耳を傾ける爽子には届いていなかった。



「………も、もしもし……」



『……もしもし、黒沼?』


数週間ぶりに聞く、愛しい恋人の声。

暖かいひだまりのようなものが胸いっぱいに広がっていくのを感じながら、爽子は再び潤み出した涙腺を必死に堪えようとした。



『ごめんな。しばらく電話できなくて…学校とバイトが忙しくてさ』


「ううん!私こそ、この前は風早くんが疲れてるのに、夜中に電話しちゃって…無理やり付き合わせてしまって、ごめんなさい」


『そんなん黒沼が気にすることじゃないよ!なかなか会えないんだから、声ぐらい毎日聞いてたいんだ』


「風早くん……」



風早の優しい気遣いに、胸が熱くなる。
思えば、彼はいつもそうだった。周りの気持ちを汲んで、誰にでも優しく接してやれる。彼の熱い人望や人徳は、そんなところからも現れているのではないだろうか。




『でもほんと、久しぶりだね。そっちはなにか変わったこととかあった?』


「……えっ……」


変わったこと。
特には、無いけれども。


ただ、本当に伝えたい気持ちは………。



爽子が答えあぐねていると、ふいに優しく肩を叩かれた。
振り返れば、何故か大きなスケッチブックとマジックペンを持った三浦が爽子を見つめている。

おもむろにスケッチブックの表紙を開いて、三浦はマジックペンでそこに何かを走り書きした。

書き終わり、爽子に見えるようにこちらにスケッチブックを向ける。




『会いたいって言え!』




そのメッセージを見た途端に、爽子はなにも言えなくなってしまった。

急に黙り込んでしまった爽子を心配して、風早が電話の向こうで何度も爽子の名を呼ぶ声が聞こえる。


そうこうしているうちに、三浦はスケッチブックの紙を一枚捲ると、更にペンを走らせた。

それを爽子に見えるように向かせて、トントンと軽く指を指して爽子に知らせる。



『早く!』




意を決して、爽子はきゅっと目をつむった。

ドクドクと波打つ心臓を片手で押さえながら、震える唇をゆっくり開いた。









「―――………あいたい……」








電話の向こうで、風早が息を飲む気配がした。


吐き出した思いは止まらなくて、ダムの洪水のように心に秘めた気持ちが溢れだしてしまう。





「……風早くん。会いたいの。わたし…ほんとは今すぐ、風早くんに会いたい……」


「…さみしいの。風早くん…ぎゅって、抱きしめてほしいの………」



風早くん、風早くん。


わがままな子供が言うみたいに、爽子はただ風早にしてほしいこと、一緒にしたいこと、行きたい場所や観たい映画など、たくさんの願いを風早にすべて伝えた。


一息ついてから、風早がくすくすと笑いながらぽつりと呟いた。



『…黒沼がこんなに気持ち伝えてくれたの、はじめてだね……』



そして、久しぶりに電話したのは、ちょうど来週にまとめて休みが取れたから、北幌に帰ってくることを爽子に知らせたかったのだと、照れくさそうに告げた。



風早との電話を終えて、爽子はくるりと三浦と向き合った。



「………すっきりした?」


どこか切なげな微笑みに、爽子は気付かない。



「…うん!三浦くん、ほんとにほんとにありがとう!」






帰り道、夜道は危ないからと爽子の家まで送るという三浦と並んで、爽子は朗らかな気持ちで歩いていた。


「…伝えたい、って思った気持ちは、我慢したらダメなんだね…」


…黙っていたら、いつまでも伝わらないままなんだもんね…。


小さな爽子の呟きに、三浦はチクリと疼いた胸の傷に気付かないふりをした。




……うん、でもね…爽子ちゃん。




オレのこの気持ちは、一生我慢して、心に閉まっておかなきゃいけないんだ。





ちりちり、と痛む心の疼きに無理やり蓋をして、三浦は隣を歩く爽子に優しく微笑んだ。







おわり
スポンサーサイト
comment
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。